インプラントリスクの回避法
Dr.シマモトによるインプラントにおけるリスクの回避法
1.手術時における偶発事故
- ドリリング時の骨穿孔
- 神経損傷
- 動脈損傷
- 骨の熱傷(62℃で壊死)
- 軟組織の損傷
- 顎骨炎(骨肉の炎症) etc.
- (1)から(3)の防止法
-
- CTを見ながら手術をします。
- 最初に骨頂より直径3.5㎜、長さ5㎜でドリリングを行い、方向指示棒を挿入し、CTを撮り、骨の理想的な位置に方向が向いていることを確認します。
- 方向が不適切な場合、理想的な一世に方向が向くまで繰り返します。(私は1度で決める)
- 同時に方向指示棒の底面から神経までの距離を測り、安全なドリリング量を確認します。
- インプラント植立時、インプラント体底面と神経までの距離を2.5㎜以上あけます。
- 術後にCTを撮り、インプラントが理想的な位置に植立されているか、神経までの距離が2.5㎜以上あるかを確認します。
- (4)熱傷の防止法
-
- 注水下でドリリングを行うのが基本であるが、あらかじめ生食にテトラサイクリン系のナミマイシン抗菌剤を注入し冷蔵庫で冷やしておくことがベストです。
- ドリリングは、低回転で、ソフトタッチで行います。ソフトタッチとは、ドリルのドリリング能力に骨切削を任せ、手はドリルを支えるだけで、決して力を加えないことです。
- (5)の防止法
-
- 歯肉を切うた場合は、歯肉の切り口同士を正確に合わせ、歯肉内の毛細血管同士をつなげるように縫合します。要するに、歯肉を切る前の状態に戻すということです。
- 毛細血管同士を元につなげることにより、血流が良くなり、治療が早く、歯肉の壊死を防ぎます。
- 歯肉を切らない場合は、アバットメント(インプラント上部の蓋)と接する歯肉に炭酸ガスレーザーを照射する。炭酸ガスレーザーは、滅菌並ぴに、創傷治療促進作用があります。
- (6)の防止法
-
- 骨内で発生する可能性のある細菌は、嫌気性菌である。この菌を殺菌するのに有効な抗菌剤は、第三世代セフェム系薬で、具体的な商品名で言うと、フロモックスなどが最良である。術後3日間以上服用させれば炎症は起きにくい。
2.上部構造(歯)が入ってからのトラブル
- (1)咬合異常
- 咬み合わせが不正確になると、顎関節症の原因になる。顎関節は、下顎骨が外側翼突節と内側翼突側により側頭骨からつられている。中心の支点は、第5頚椎である。下顎骨の位置がずれると、頸椎がずれて、頸椎の中を走っている神経と動脈が圧迫され、脳への血流や神経の伝達が疎外され、様々な不定愁訴の原因になります。
-
<防止法>
咬合には、理想的咬合と個人咬合がある。理想咬合とは、Dr.が理想と思われる噛み合わせを決める事です。(受動的)
個人咬合とは、患者独特の咬み合わせのことです。(能動的)
個人咬合が最良な咬合のことです。
この咬合を取得するためには、トランスフォーヘースボーという特殊な器具を使用し、咬合機能をチェックしながら、咬合調整をすることが必要です。 - (2)インプラント体脱離
- これは、Dr.の技量40%、インプラント体60%である。
- インプラント体の選択が非常に重要です。世界で800種類以上あるインプラント体の中で、半永久的に抜けないインプラントは、プローネマルクとストローマンと言われています。
- (3)インプラント体破折
-
これは、インプラント体で決まります。
破折しないインプラントは、ブローネマルクとストローマンと言われています。 - (4)感染
-
大きく分けて下記の2つに分けられます。
<Ⅰ>インプラント周囲炎
<Ⅱ>歯周病 - (処置法)
- ニューキノロン系の抗生剤を3週間程服用することにより完治する。
- (処置法)
-
①掻把
麻酔下で炎症性物質不良肉芽を除去する。 -
②骨から出血させる
骨から出血させることにより、血液中の白血球、リンパ球の滅菌作用が期待できる。また、血小板により、骨欠損部に新生骨を作る。造骨剤は、2ヶ月ほど経過してからCTを撮り、必要に応じて補填すれば良い。 -
③洗浄
テトラサイクリン系抗生剤のナミマイシン含有生理食塩水で行うのが最良である。 - ④ニューキノロン系抗菌剤の服用
- (処置法)
-
インプラント体の抜去
いきなり重要期にはなりません。検診を怠らず、初期、中期の段階で治療しましょう。 - (処置法)
-
①歯肉炎
歯石、不良肉芽を除去し、ミノサイクリン塩酸塩の注入。これを2週間ごとに繰り返し、経過を見ていく。大体1回の治療で治ります。 - ②歯槽骨炎インプラント周囲炎の治療法に準します。
<Ⅰ>インプラント周囲炎について
初期
インプラント体周囲の骨が少しV宇型に欠損します。
痛み、腫れ、動揺はなく、自覚症状がありません。その為、検診の時のレントゲンで発見されることが多いです。
中期
この時期になると、初期より骨欠損が大きくなります。また、痛みや腫れなどの症状が現れます。動揺だけはありません。
重要期
この時期になると、骨欠損がインプラント体全周に及び、痛み、腫れが激しく動揺も大きくなりがちです。
<Ⅱ>歯周病
大きく分けて①歯肉炎②歯槽骨炎に分かれる。歯肉炎から歯槽骨炎に波及します。
歯肉炎の時点で消炎するのが理想です。
<感染防止法のまとめ>
定期的な検診を怠らないことが重要です。Dr.は初期の時点で炎症を発見することが可能だからです。
またインプラント体は当院で使用しているストローマンインプラントがおすすめです。ストローマンインプラントは感染が起きにくいのも特長です。

